2003年12月18日に厚生労働省へ介護保険制度の見直しにあたっての要望書を提出しました。

 
厚生労働省
大臣 尾辻 秀久殿

介護保険制度の見直しにあたっての要望書提出について

21世紀の前半には、世界に類を見ない速さで社会の高齢化が進むわが国の切り札として登場した介護保険制度が施行され早くも5年が経過しようとしています。

私たちACT及び連携して運動と事業を行なうたすけあいワーカーズがNPO事業者として介護保険に参画したのは、介護保険制度の理念である「利用者の自 立支援」「自己決定に基づく契約」「利用者本位」「権利と尊厳の擁護」「介護の社会化」が、1992年設立以来当会が活動してきた自立援助サービスの理念 と一致していたことも大きな要因のひとつでした。

ACTは公正・中立な立場で利用者の生活を支えるNPO・ACT指定居宅介護支援事業を立ち上げ、28人の介護支援専門員が実践しています。同じ理念の もと連携する33たすけあいワーカーズのうち28団体はNPO法人として指定または基準の訪問介護事業に参画し、利用者の視点に立ったNPO事業者として 地域での実践活動に取り組んでいます。

ACTの常設会議である公的制度対策会議、たすけあいワーカーズ代表者会議では、社会保障審議会介護保険部会から提出された「介護保険制度の見直しに関 する意見」に関し、調査、検討を行ない、利用者の視点と介護を行なう現場サイドからの視点で要望をまとめました。よろしくご検討下さいますようお願いいたします。

2004年12月28日 特定非営利活動法人
アビリティクラブたすけあい(NPO法人ACT)
理事長  香丸 眞理子
たすけあいワーカーズ33団体
ACT公的制度対策会議

介護保険制度の見直しにあたっての要望書
2004.12.28
特定非営利活動法人
アビリティクラブたすけあい

 

 

1.給付の効率化・重点化について
生活援助の重要性、自己選択の尊重を図ってくださ
い。

(要望1)日常生活の維持・継続に力点を置き、サービスメニューの選択肢の一つとして「生活援助」を位置づけて下さい。

(要望2)個別性ある状況を的確に見極め、自己選択を尊重し、必要な生活援助が行なえるようにして下さい。

(要望3)「身体介護」と「生活援助」の報酬の一本化を図ってください。

(1) 介護保険が制度として持続可能なシステムとして継続させるために給付の効率化・重点化を図るのは大切な視点です。しかし、「生活援助が軽度者の状態の改 善・悪化防止に必ずしもつながっていない。」と断言するのは早計ではないかと考えます。当団体の要支援・要介護度1の利用者で維持・改善をしている者の対 利用限度枠利用率は35.65%というデータがあります。

また、日中独居も含めた独居利用者で日常的には自分の力で何とか生活を維持していますが、週に1回~2回生活援助に入った訪問介護員と一緒に家事をした り、話しながら食事をすることで社会や人とのつながりを感じ、生きる意欲の喚起につながる多くの事例があります。

いわゆる「家事代行」は自立を阻害することが懸念されますが、生活の意欲を喚起するような「生活援助」は最も基本的な介護予防であると考えます。今回、 様々な介護予防メニューが提示されましたが、単に身体機能の維持強化という視点に力点を置くのではなく、日常生活の維持継続にこそ力点を置き、選択肢の一 つとして生活援助を位置づけることを要望します。

(2) 介護保険は従来の措置制度としての福祉から自己選択・自己決定に基づく契約制度に変革されたものです。その理念は、自立の支援と人としての尊厳と権利を擁 護するというものでした。認定審査後の地域包括支援センターによる介護予防給付への振り分けは、措置制度に逆行する要素があることを強く懸念します。要介 護者一人ひとりの個別性のある生活状況、身体状況、精神状況を的確に見極め、尊厳ある生活を送れるように自己選択を尊重し、必要な生活援助を行なうことに 力点を置いていくことを要望します。

(3) 援助を必要とする方にとって、身体介護と生活援助はいずれも必要不可欠なサービスであり、提供する側にとっても内容や難度が明確に分けられるものではありません。身体介護と生活援助の報酬の一本化を図ることを要望します。

2.新たなサービス体系の確立について

(要望1)市民の力を活用して地域密着型の多機能な住まいを実現するために支援してください。

(要望2)介護保険で医療と介護が密な連携が取れるようにして下さい。

(要望3)研修体系の確立と医師の指導のもと、介護職にも在宅生活の現場で不可欠な医療的行為をできるように改善を進めてください。

(1) 人としての尊厳をもって、住み慣れた地域で安心して暮らし続けていけるようにす るためにも、住まい方も含めて地域密着型の多様性と柔軟性のあるサービスの創設を推進することが重要と考えます。同じ地域に生活する市民の力を大いに活用し、地域密着型の多機能な住まいを実現するために是非NPOへ支援してください。

(2)介護保険は福祉分野ですが、医療との連携は重要不可欠であり、連携を図るシステムの構築が急務です。今回、医療そのものに関する具体的な見直しが示 されていません。主治医意見書の書き方の開きが大きすぎるなど、医師にも介護保険や高齢者の痴呆・精神疾患等の研修の実施をご検討ください。また、サービ ス担当者会議への医師の参加が余り行なわれていない状況もあり、連携を図るための具体的な検討を要望します。

(3)訪問看護と訪問介護と重複することもあり、大きな報酬格差を考えると医療保険と介護保険の役割の見直しが必要です。居宅療養管理指導費として月あた り医師が2回、歯科医師が2回、歯科衛生士が4回認められていますが、医療保険で治療費も出ているので見直しが必要です。生活介護の現場では医療的行為が 必要になることがありますが、現行制度では介護職では対応できません。研修体系の確立と医師の指導のもと、介護職にも在宅生活の現場で必要不可欠なな医療 的行為をできるように改善することを要望します。

3.サービスの質の確保・向上について

(要望1)介護支援専門員が利用者を守ることに専念でき、居宅介護支援事業所が独立した経営ができるような単価の設定と位置づけの明確化、改善を急いで下さい。

(要望2)従来の基幹型も含む在宅介護支援センターと地域包括支援センターの役割の違い、介護予防に関する基礎自治体の役割等を明確にして下さい。

(要望3)訪問介護員の労働環境整備や研修体制の充実を図るとともに、社会的に家事・介護を価値ある労働として評価できるような啓発活動を積極的に図って下さい。

(1) 介護保険制度で被保険者の生活と権利を擁護する役割を介護支援専門員が担ってい ます。しかし、現在の介護支援専門員の活動する環境は決して望ましい状態とはいえません。生活援助が廃用症候群を招いているという指摘がありますが、一部 の民間営利系の併設事業所では、利用者にとって生活を支えるのに必要なサービスをどう提供するかという視点ではなく、どうやって利用限度枠を使い切るかと いう視点でプランを立てているとしか思えないケースもあると思われます。介護支援専門員が利用者を守ることに専念できるようなしくみをつくることが必要不 可欠です。
介護支援専門員は公正・中立性を強く求められていますが、それを構造的に担保できるしくみになっていません。介護支援専門員が被保険者の立場に立ち活動が できるようにするためには、一定の独立性の保てる身分保障が不可欠です。居宅介護支援事業所が介護支援専門員の業務だけで独立した経営が継続できるような 単価の設定、位置づけ等の再検討を急ぐことを要望します。

(2)要支援と要介護度1の方で新介護予防に振り分けるための認定審査会の役割がより 重要になりますが、主治医の意見書の書き方、訪問調査の項目も増えるなど公正・効率的な認定審査ができるか不安を感じます。また、従来の基幹型も含む在宅 介護支援センターと地域包括支援センターの役割の違い、介護予防に関する基礎自治体の役割等を明確にすることを要望します。

(3)介護保険で在宅サービスの重要な担い手として活動する訪問介護員の労働環境や身分保障、社会的評価も決して充分とはいえません。去る8月27日に厚 生労働省老健局振興課長より「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」という通達が出されました。しかし、介護保険では通院介助時の待機時間が算定 されない等、事業体にとっても厳しい状況があります。訪問介護労働者の労働環境整備や研修体制の充実を図るとともに、社会的に家事・介護を価値ある労働と して評価できるような教育・啓発活動を積極的に図るよう要望します。

4 被保険者・受給者の範囲について

(要望1)国の諸機関による税金・保険料等の適正・効率的な制度運用を大前提とし、医療保険や介護保険、年金保険など社会保険の重要性について学校教育から市民への啓発まで丁寧に行って下さい。

(1)介護保険の理念からすれば、全ての国民にとって介護が必要になった時、権利として必要なサービスを受けられることが理想です。しかし、それをもって 障害者支援費制度との統合や、被保険者の範囲を一気に広げることには無理を感じます。支援費制度は2003年度より施行されたばかりです。当事者は、介護 保険制度との統合により従前の権利が縮小されたりなくなることを強く懸念しています。また、若い世代の国民年金の未払いの問題等社会的なコンセンサスがで きているとはいいがたい状況です。国の諸機関による税金・保険料等の適正・効率的な制度運用を大前提とし、医療保険や介護保険、年金保険など社会保険の重 要性について学校教育から市民への啓発まで丁寧に行うことを要望します。